食後、洗い物をしていると必ずやってくる衛さん。一番の友達だが、早口と滑舌の悪さで、話の内容を理解できるのはわずか5%ほどだ。だが、長年の経験で、私はもう慣れっこになっている。衛さんの表情や仕草を頼りに、適当にあいづちを返しながら話を聞く。「そうなのか」「ほんまに」「ありがとう」といった定番のフレーズを使い、彼が満足した表情を浮かべるまで話を続けさせるのが私の役目だ。
最後に「また教えて」と言えば、衛さんは嬉しそうにその場を去っていく。一生懸命に話してくれる彼に、内容がわからないからといって無視するわけにはいかない。衛さん専用の翻訳アプリがあれば、と心の中で期待しつつ、今日も彼との絶妙なやり取りを楽しんでいる。