パニック症の珍奮闘記

パニック症に贈る笑いに変える生き様

稲村最強伝説!

これは、ある名物ヘルパースタッフ、稲村さんの物語だ。彼がこの施設に来てから、もう6~7年は経つだろうか。彼を例えるなら、「山」や「川」のように、そこに在るだけで大きな存在感を放つ自然の一部かもしれない。何よりもまず、言っておかなければならないことがある――彼には悪気は一切ない。

 

ただし、入居者の名前は覚えられない。それどころか、頭文字さえ出てこないほど記憶力に自信がない。もしかしたら、自分の名前すらも怪しいかもしれない。食事の配膳を始めると、彼の独り言が増える。誰の食事から運ぶべきか迷い、その上、飲むお薬のセッティングと戦う羽目になる。見ている側からすれば、その姿はまさに混乱の渦だが、彼なりに頑張っているのだ。

 

幸いにも、周囲にはサポートスタッフがいるため、ギリギリのところで安全が保たれている。入居者からのクレームや怒りは、彼にはまったく通じない。まるで顔色一つ変えず、機械のように仕事をこなし続ける。いや、実際には聞いていないのかもしれない。そんな姿勢にもかかわらず、なぜか彼は多くのクレームに潰されることなく、マイペースを貫き通している。

 

稲村さんは、同僚のスタッフからの不満の声にも全く影響されない。むしろ、新人スタッフに平然と質問をしている姿は、なんとも可愛らしくさえ見える。彼が今日もまた、何事にも動じず仕事をこなすその姿は、まさに「稲村最強伝説」として語り継がれていくことだろう。